フリーター女子(23)生存記録

クソフリーターの日常記録です。ライブ三昧の日々。

ワンピースおねえさん

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夜中、宅急便で届いた新しいワンピースを着てみるなど。ノースリーブの綿麻の黒、ハイウエストでスタイルが良く見える。手に取った時、「あれ、ウエスト細すぎないか?」と少し嫌な予感がしたが、一刻も早く着てみたい!とパジャマを脱いでみる。

 


背中にファスナーはない、ふむ、それではスカート部分に頭を突っ込んで、Tシャツを着るように体を通してみよう。

嫌な予感がする。やはりウエストが細すぎる。手を先に通し、頭をウエスト部に通そうとしたところ、ミチミチと音がする。耳がちぎれそうになるが、一刻も早く着てみたい!と無理やり頭をずぼっと貫く。

 


あー!着れたー!と姿見の前でゆらゆら裾をたなびかせてみたりして、うん、可愛い!やっぱり素敵じゃない!と思いながらも、ふつふつ、頭の隅で「ウエスト部分」の闇を感じ始める。

 


一体どうやって脱ぐのか。着るだけでも大変だったのに、ここからこの布を体から剥がす作業、一体どうすれば。

完全に体にぴったり密着しており、どう考えても脱げない。誰かもう1人そばに居てくれたなら、裾から布を反対にして引っ張ってもらうのだけど、なんということ一人暮らし。

しかも夜中。下の階には耳の遠いおじいちゃんが住んでいるけれど、「すみませーん!このワンピース脱げないので、手伝って貰えませんか?」さすがに言えない。無理だ。

 


とりあえず、布がちぎれないよう気をつけつつ、片腕だけ袖から抜いてみる。ミチミチ。これまたギリギリだが、なんとか抜ける。抜けた、つまり、ウエスト部分に腕が1本入る形になる。あ!このまま肩を通すことが出来れば、脱げる!と少し喜んだが、これが最悪の一手となった。

 


片腕が完全に身動き取れない状態で、かつ、腕が1本ウエスト部分に入り込んだことにより隙間が完全に消滅。肩を通すなど、どう考えても物理的に難しい。服に隙間が何も無い。隙間がより無くなった上に稼働可能な腕が1本に減った。完全に無理だ。鏡の前で独り言が止まらない。「この服作った人、何を考えている?」「さっきの段階でおじいちゃんの所に行くべきだった」「拷問なのか?」

 


拘束されることがこんなに苦痛だとは思っていなかった。腕が全く動かない。脱げない。キツい。気が狂う。

ほぼ発狂しながら「何をどうすればいいんじゃ!」と最終手段のハサミを探す始末。

6900円のワンピース。しかも新品。キレ散らかしながらも、なんとか切らずに済む方法は無いのか?と模索するが、拘束されているのがあまりにも苦痛すぎて一刻も早く開放されたいと願う私。

もう無理だ、汗もダラダラ流れる上に、明日は朝から仕事。このまま寝て、片腕で出勤する訳にもいかない。切るしかない。

 


裁ち鋏を右手で持ち、左脇のノースリーブの袖に刃を差し込んでみる。無念だがしょうがない。

ガチッ、カチャ。

ん、カチャ?布なんだから金属音はしないはず···と左脇を見てみたところ、なんと脇下からウエストの下までにかけてファスナーがついていた。

 


「ファスナァァァァァァ!」あまりにも嬉しすぎた。ファスナーがこんな所に!これだから6900円のオシャレワンピースは。そんなところに居るなんて私は分からないです。

切らずに済んだ!そうだよね、どんなに細くてもこの服の構造上、ファスナー無いと脱げませんよね!と嬉々としてファスナーを下げてみる。

 


ミチッ。

ミチチチチチ。

 


1ミリも下がらない。ミッチミチで、しかも片腕だと布を押さえる力が無いために下ろせない。下におろそうとしても布がついてくる。

「バカにしやがってえええええ!!!!!」

完全にブチ切れながら試行錯誤するが、6900円、さすが侮れない。ビクともしない。お前、切る事だって出来るんだぞ!と叫びながらも、切る事によりダメージを受けるのは結果私なのである。切りたくない、切りたい、切りたくない、、、

 


15分ほど格闘し、あ、もうだめです。もう切ります。と全て諦め心が静まったところ、いらない力が抜けたのか、シャッ!とファスナーが下りた。

 


トータル40分ほど片腕が拘束されていたので、開放された時の左腕といったら、もう素晴らしかったです。

人生の教訓、ワンピースのファスナーは、側面についてることもある。教えてくれてありがとう。

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