フリーター女子(23)生存記録

クソフリーターの日常記録です。ライブ三昧の日々。

村上春樹「一人称単数」

 

 

短編小説は好みではない、なぜなら短いから
長編小説が好きだ、持ち運べる映画のようだし、なによりワクワクする、ひとつの一貫した世界観の中で安心していたいから

 

自分で短編小説は買わない、好きな作家がいても短編小説には手を出さない、1冊の中でころころ軸が変わるのがつかれる、漠然とした不安、本は安心していたいもの

 

村上春樹の短編集が出たと聞いて、へえ としか思わなかった、買う気はなかった、逆に長編じゃないことにガッカリもした、本屋でみかけても手に取る気にならなかった

無意識的に手に取ってしまったのは、セッションの前に少し時間があき、ふらっと本屋に入ってしまったあの時
何も考えず、あれだけ毛嫌いしていた「短編集」をパラパラめくってしまったのは今、改めて考えても何故だろう?無意識だからしょうがない、きっと誰の本でもよかったんだ、新刊として平積みにされていたので手に取りやすかった

 

普段絶対にみることのない目次を目にする
小説を読む際、絶対にみたくないのが「目次」、すべて読み終わったあとに読むものがわたしの中での「目次」

この時のわたしは普段の本屋さんのわたしとはちがうものだったんだ、短編小説を手に取り、目次を見る、普段と真逆の行動、変なの

 

 

目次を見て息を飲んだのは、「ウィズ・ザ・ビートルズ」の文字が目に飛び込んできたから
ビートルズはすきだ、2枚目のこのアルバムは特に好きだ、モノクロの4人がジャケットに閉じ込められている、すこし寂しい感じのする1曲目(曲を聴く際にわたしはほぼタイトルを覚えない)、音楽に偏りのあるわたしでもお気に入りの1枚としてあげられるレコード

 


とりあえず少し読んでみよう、まんまと心奪われた、すこし悔しい、本当なら「ウィズ・ザ・ビートルズ」を読みたかったがページをめくるのが面倒だったので、1作目から読むこととする

 

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主人公がわたしの恋人と同じ場所に住んでいた
わたしと同じ中央線快速に乗っていた
家に行く為ふたりで下り電車に乗っていた
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本を置いて、店を出る
ビートルズと同じ時期に活躍していたザ・ローリング・ストーンズのセッションに参加するため、早歩きで向かう

あの時本は買わなかった、少し時間を置こうと思った、
あまりにも自分とシンクロする部分があったから

 


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今朝、恋人の家を出てまず向かったのは小さな本屋、駅の近くにある書店、ここで村上春樹の「一人称単数」を買う、決めていたこと

1冊手に取り、今度は目次も見ず、一直線にお金と交換し私のものとなった
中央線快速の下りに乗り、読む
あの二人も四谷から彼の家まで同じ電車に乗ったのだ、彼女はもう少し先の小金井まで

 

「わたし」はこの電車の中で、この「一人称単数」の中で、本の中の彼らと同じ時間を共有している
この事実を考えている時間、ふしぎなことだが、中心がいくつもあって、しかも外周を持たない円、これらのことを考えている時間と、すこし似ていたりもするよ

 

 

 

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